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「そうよねぇ、お父さん?」
「愛実、ひとつ聞くが…今のように皆藤さんと一緒に暮らして生活しているのと結婚するのとでは何が違う?何が変わる?」
彼女のお父さんは真っ直ぐに愛実を見つめる…その眼差しは、この返事がどれだけ大切かを物語っているような…穏やかな口調とは違う強い視線だ。愛実、大丈夫か?と隣の彼女を見て、さすが俺の愛実だと思った。
愛実は先ほどまでの固い表情は崩し、とても優しい表情で一度俺を見てから
「彼の全てを受け入れ、私の全てを彼に預ける。互いの人生を手を繋いで…腕を組んで平行に歩むのではなく…私たちの人生が重なり合った一本の線になる。私のこれからの揺るがない幸せの形」
両親を順に見やり微笑みながらそう言った。俺は同じように向かい合いご両親を見ながら愛実の手を強く握りしめた。そっと握ったのでは俺の指の震えが愛実に伝わりそうだったから…それほど俺の心は歓喜に震えた。
「母さん、いいんじゃないか?」
「えっ?お父さんっ!」
「愛実は皆藤さんのいいところを並び立てる訳でもなく…ただ自分が幸せだ、幸せになれると確信しているんだよ。そしてそれが揺るがない幸せの形、だと。うちの娘はそれがわかるまでに少し遠回りしたってことだ。いいんじゃないか?」
「俺は近くで二人を見ていて…愛実を見ていて、本当にいい表情をするようになったよ。悠衣と一緒にいるようになってから。モテ過ぎて男がわからないまま困ったことになったんじゃないか?俺ガード大変だったからな」
俺は愛実の手を握ったまま、お父さんと克実の言葉に応えた。
「少しの遠回りで素敵さが増す、人間味が増す、大きな人になる…良くあることです。克実の言った事と少し似たようなことは、うちの母が言っていました」
「愛実、皆藤さんのお母さんと会ったの?」
「うん、ご両親ともに」
「…離婚のこと…」
「愛実さんが自分で言いました。その時‘自分が魅力的だから二度も三度も何度も結婚できるのよ~って胸張ってたらいいのよ。下向くようなことじゃないわよ’母が彼女に言ったんです」
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