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旅行の期間中、ジョホール・バル(Johor Bharu)のホテルに滞在を決めているだけで細かい予定は決めていない。この街で両親が暮らしていること、一日くらいシンガポールに行こうかという程度で決めた。陸路でシンガポールまですぐだからな。
空港まで迎えに来た両親がいきなり自分たちのコンドミニアムへ連れて来た。
「愛実ちゃん、フライト疲れたでしょ?出る前にアイスティー作って冷やしてあるの、飲む?」
「はい、ありがとうございます」
俺のアイスティーは出て来ないのかと思うくらいの会話だ。
「悠衣はここに来たことあるの?」
「ある」
「プールもあってホテルみたいだね」
「愛実ちゃんもここに住む?物価は安いし、かといってローカルなものだけでなく日本の大手スーパーがあるし、気候はいいし住み良いわよ。はい」
「ありがとうございます。いただきます」
美味しい…と一口アイスティーを飲んでから愛実が聞く。
「マレーシアの中でもジョホール・バルを選ばれた理由はあるんですか?」
それには親父が答えた。
「クアラルンプールと迷ってね。コンドミニアムや買い物の条件はそう変わらないんだ。決め手となったのは渋滞だね。ここにはない車の渋滞がクアラルンプールにはある」
「なるほど」
「あとは、たまにシンガポールまで仕事で行くんだが、ここからだと車で行ける」
「日本にはない感覚だよね、車で国境越え」
愛実が俺を見てにっこりとリラックスした顔で笑う。
「やってみればいい、車で国境越え」
「うん」
両親をどう引き離すか…このままだと愛実を離しそうにないな…。
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