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「俺たちは新婚旅行中なんだ。愛美と二人きりの時間を楽しむ予定だ」
両親の顔を交互に見てはっきりと言うと
「そうね、楽しんでね」
「二人でゆっくり楽しめばいい」
拍子抜けするほど簡単な返事が返ってきた。それならいいんだ。翌日から2日間は観光地を回ることにした。といっても、ツアー客とは違ってのんびりとした動きだ。途中でマレーシア資本のスーパーがあれば立ち寄り、シンガポール資本のスーパーがあれば立ち寄る。
「このシンガポールのスーパー高級スーパーだよね」
「デパ地下に近いか?」
「スーパー巡りだけで観光できちゃう」
「ホテル近くにイギリス資本のスーパーがあったぞ。行くか?」
「帰国までには行きたい」
そして観光地では、アルルミグ・スリ・ラジャカリアマン・グラス・テンプルというガラスで出来たヒンドゥー寺院が愛実のお気に入りだ。
「光り物の好きな人がときめく場所だ。でもDiamante Kaiとは別物…ふふっ…面白いよね、ここ」
「確かにな。薄暗いところもガラスの反射で明るい」
「うん。それに…」
愛実は俺の腕を持ち背伸びするようにして耳元で内緒の話をする。
「ヒンドゥーのお寺なのにキリストの像があるとか…ふふっ…若干なんでもありって感じがマレーシア?」
「キスしてくれるのかと思った」
チュッと軽く唇を重ねると愛実は慌てて俺から離れる。
「ふっ…誰も見てない」
「ヒンドゥーの仏像に見られたよ」
「ちょうどいい。愛を誓う」
「…悠衣も何でもありだね」
「愛実への愛は嘘偽りがないからな。世界中のどんな神や仏の前でも誓える」
そう言ってもう一度唇を重ねた。
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