first chapter

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 だが数ヶ月後にここで再び彼女を見かけた時、彼女は時計を着けておらず左手薬指のマリッジリングも消えていた。  覗き見る横顔は初めて見た時と変わらぬ端麗さだが、肩甲骨下辺りまであったであろうロングヘアが、セミロングと言えるくらいに変わっていた。ピンクベージュのストレートヘアはレイヤーで動きのあるスタイルに整えられ彼女の若々しさを引き立てている。 「待たせてごめんな」  彼女の頭をポンポンとしながら隣に座ったのは…あのモデルのような男。指輪は消えたが男は変わらず…この男は夫ではない?夫がいながら遊んでいた?まだ若そうだが美貌を生かして男と遊び放題か?  その後見かけたのは一度だと思うがその時、彼女は今日のように一人だった。1年以上見ていないはずだが変わらぬ美しさの女だ。 「ピンクがかったパールのピアス…似合ってた」  ジュエリーデザイナーのブレントらしく、彼女の身に付けていた物が目についたようだ。 「そうだな。肌の色、髪の色によく似合っていたな」 「まだ20代に見えたけど、普段使いでパールをあんなにしっくり使いこなす子、なかなかいないよ」  アメリカ人のブレントから‘しっくり’という言葉が出てきたことにも段々驚かなくなってきたと思いつつ頷いた。
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