お母さんとママ

お母さん

「あれ……お姉ちゃん。こんなとこで。久しぶりね」
声をかけられて妹も同じ運命を辿ってると姉は知った。
この廃棄所に放り込まれているのは全員が人間の母親だった。子供の選択の結果だ。子供はみんなロボットの親の方が好き。都合のいい親が好き。いいように設定できる親の方が。そういうこと。
子供からの成績表を分析し、厚労省が結論を出した。成績の悪い「お母さん」には、「ママ」が取って代わるという法律ができた。それは18歳、義務教育中、いやそれより前、と、どんどん前倒しになっていった。
生みの母親を指す「お母さん」という単語は出産直後しか使われなくなり、やがて死語となった。世の中は「ママ」一択。

（完）