キラキラパァツ専門店へようこそ

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 早歩きだったはずが気付けば全速力で駆けていた。不思議と道の形だけがよく見える。  真っ暗な闇の中、関門を抜けてからどれほど走っただろう。振り向くのも恐ろしい気配に焦燥し冷や汗が止まらない。ぜえぜえと鳴る肺が詰まりそうになったとき、ぽうっと柔らかな明かりが道の先に灯り「おいで」と聞こえた気がした。  そこに行けば助かる。  直感的に働いた頭より先に足が向かう。重い足を全身で持ち上げる。右左右左。  ああ、念のためパンツスタイルにしてよかった。パーカーも着心地が良いし、髪も思い切ってショートにしたし、履き古したスニーカーもいい感じだ。あれ、この地面、アスファルトじゃないな。土でもないし、変なの。迫り来る危機が計り知れず、頭のなかは別のことを考え始める。  必死に走り、近づけば灯っていたのはランタンだった。石畳の道、石造りの平屋。ランタンがひとつ脇にぶら下がっている曲線の扉に思い切り飛び込んだ。  ――ガラランッ 「すみません!」  熊避けみたいな野太いドアベルの音が荒れた息とひっくり返った声に混じって聞こえた。へたった腰に力は入らず、絨毯に転がったまま呼吸を整える。 「ようこそいらっしゃいました。こちらキラキラパァツ専門店です。パァツはどちらになさいますか。ご試着もできますので遠慮なくお申し付けください」
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