6人が本棚に入れています
本棚に追加
頭に響く足音、子どもの声。手に触れる細かな葉の感触。これは、芝生だ。芝生? ガバッと身体を起こす。
「公、園?」
そうだ。昔住んでいた団地近くの公園だ。
「あれ、鳩は?」
探すと公園の鳩に混ざって玉虫色の鳩が豆を食べている。
「ああもう、本当に鳩なんだね」
他の鳩が飛び立つ中、急いで抱きかかえる。どこから探そうか。公園の時計は17時、季節は初夏のようだ。服装が合ってよかった。真冬じゃ凍えてお兄さんを探すどころじゃなかった。
「ずるいよ! ブランコはじゅんばんこでしょ!」
小さな女の子の声に、聞き覚えがあり進めていた足が止まった。続いて町内放送がかかり、七つの子が響き渡る。
初夏、公園、17時、ブランコ、七つの子――お兄さんと出会った日。
素早く顔をあげる。
まっすぐ前に見えたブランコには黒いワンピースを着たままの、幼い私が座っていた。怒鳴っている女の子と、止めようとする小さい男の子がいる。
「ずっとブランコ乗ってるのおかしいよ!」
そうだ、斎場から逃げ出して来たところだ。ここでお兄さんが助けに来てくれる。良い時間に送ってくれたなと鳩を撫でながら、遊具の後ろに隠れて幼い私を見守った。十一歳になりたての私、あんなに小さかったんだ。
「ねえ、聞いてるの!」
最初のコメントを投稿しよう!