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店主は顎に手を当てる。
「なるほど……かしこまりました。少々お待ちを」
そう言って奥の廊下に引っ込んだ。
ぐるりとひと回りする。
改めて、普段着の私が浮いてしまうほど凝った内装だ。ショーケースの明るさは柔らかいとはいえ数が多く、光が強すぎて壁紙もバーガンディということ以外よくわからない。すぐ横の会計台はアンティーク調のシンプルなもの。絨毯も靴に食い込むほどふかふかしているわけではなく足音を減らすくらいの起毛だ。
「お店はお気に召しました?」
わっ、と肩がビクつく。いきなり背後から店主が現れたのだ。
「ふふふ、どうぞこちらへ――」
そうして悪戯そうな笑みを浮かべ、私を奥の部屋へと招き入れた。
「暗闇のお客様でこっちの依頼はたくさんいらっしゃるんですがね、昼間のお方は珍しいので片付けておりました」
「魔法で?」
「ええ、まあ。きれい好きが多いと聞いたので」
店主、どうやら片付けは苦手のようだ。小部屋の明かりは天井に浮かぶランタンが三つ、薄暗い廊下から入るとき目を細めてしまったくらい煌々としている。会計台と同じアンティーク調のテーブル、その上にバーガンディのクロス、メモ帳、椅子、本棚に読めない文字の本がきれいに飾ってあった。
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