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笠井が宮田を連れて向かった先は、まだ行ったこともない、知人に教えてもらったばかりの穴場スポットだった。車では入れない細い道の先にあるらしい。
しかし、街灯がない。ただひたすら暗い海に向かって伸びる、細長い堤防らしい。
自転車のライトを頼りに目的地へ到着すると、あまりの暗さに、二人の会話も小声になる。
「本当に大丈夫か、誰もいないぞ……」
「ま、まぁ、穴場だからな……」
恐る恐る懐中電灯で照らしながら一歩ずつ足を進めると、宮田が声をあげた。
「これは!」
黒い模様が地面に広がっている。
間違いない、イカ墨だ。釣り人たちが残した、戦の跡だ。
それを確認するや否や、瞬く間に二人の竿は海へと向けられた。
餌木は昼間に光を溜めておいた、夜釣り用の蓄光タイプだ。二つの青い餌木が暗闇に放物線を描き、海へと落ちる。
「宮田、おまえも青か!」
「神のお告げだからな!」
海は小さな波紋を二つ広げ、二人の餌木を飲み込んでいった。
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