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扉を開けて現れたのは、ビニール傘とカバンを手に持った、これまた二十代後半とみられる男だった。
「お疲れ様。シュウ」
「っ!?……アキはどうしてずぶ濡れなんだ」
シュウと呼ばれたその男は、ドアを開けていきなり現れた大男の姿に驚いた様で目を大きく見開くが、直ぐにその目を細めて怪訝そうな様子で大男に返事をする。
「それは……」
アキと呼ばれた大男はここまで来た経緯を話そうとするが、タイミング悪く奥の部屋から家主のタクが着替えを手に持って玄関に戻って来る。
「よっ。シュウもお疲れ」
タクは、シュウがチャイムを鳴らさずに部屋の中に入って来ている事に驚く様子も無く、慣れたようにアキに服を差し出しながら話に加わる。
「ああ、お疲れお邪魔してます……それで?どうしてアキはそんなに濡れてるの?」
「えっとな……グシュン‼」
シュウは頑なにアキが濡れている理由を聞いていたが、玄関のドアが開きっ放しな事もあって、冷えた廊下でアキは大きなくしゃみで返事をする。
「とりあえず中入れって、外寒かったろ?」
「それもそうだな」
「うぅ……さむー」
「アキは服着替えてから来いよ」
シュウが靴を脱いで部屋に上がろうとすると、タクはそれを拒否して小さな靴棚の上に先ほど持ってきた着替えを置く。
「なら、先に準備して待ってるから」
シュウは狭い玄関だというのに器用にアキの横を通って適当に靴を脱ぐと、そのまま二人だけで廊下を歩いて行ってしまう。
「ええ……」
玄関に残されたアキは声にならない不満の声を漏らすと、グショグショに濡れて少し重い服を脱ぎ始めた。
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