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「これってもう入れていいの?」
「入れろ入れろ!」
「これ順番とかあるの?」
「分かんねえけど何とかなるって」
「熱っ!なんか飛んできたけど」
「気をつけろって言ってたろ」
「汁が飛んできただけだわ、汁旨ぇ」
「え、なんか浮いてね?」
「浮く!?」
「何入れたんだよアキ!?」
「俺かよ!」
「まあまあ、とりあえず入れ終わったぞ」
「俺もこれで……おしまい」
「俺も終わってるよー」
「じゃあ、小皿一杯分食べたら電気つけるか」
「うう、やっぱりなんだか怖いな」
「じゃあ、俺、アキ、シュウの順番で入れるからな」
暗闇の中で弱火の明かりを頼りに、カチャカチャと土鍋を鉄のお玉でかき混ぜる音が部屋に響き渡る。
「確かにこれはドキドキするな」
「うわ、こええ……ハイ次アキ」
「お、おう……この浮かんでるやつは取っておかないとな」
「やめろよその不穏なセリフ」
「俺も入れたよ。はい次シュウな」
「最終確認なんだけど、鍋に入れるもの入れたよな?」
「もちろん。そのままでも食べられて、美味しく食べられるものだよ」
「お前のその基準は信用ならないんだよ。それにもう一人の返答も無いしよ」
「まあまあ、もう逃げれないんだしさ。ガッと行こ?」
「うう……入れたよ」
「それじゃあ電気つけるな」
カチッと言う音と共に真っ暗だった部屋に無機質な光が溢れてきて、部屋の中に色を灯す。
部屋の中は電気が消える前と何も変わっていない状況で、幸い部屋の中が荒れ果てているという事も無かったが、三人の視線は土鍋の中に釘付けになってしまっていた。
「えーっと?豆腐に白菜……具材は普通なんだがなんだこの色」
「えっと白状するけど、俺は出汁だけ変えるかってトマト鍋の素を入れたけど」
「アキもか、俺も豆乳鍋を……」
「俺もチゲ鍋」
アキ、シュウ、タクの順番で答えていくのは鍋の素の話だけで、机の真ん中では具材だけがしっかりとした鍋がグツグツと音を立てる。
「……食うか」
「おう」
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