口紅

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私は25歳になるまで、男の人と付き合ったことがありませんでした。手を繋いだこともないし、もちろんキスや体の関係なんて全く知りません。男の人に興味がないわけじゃないんです。けど、気になる人や好きになる人は全くいませんでした。 ある日、お風呂上がりに素っ裸で鏡の前に立ちました。自分の裸をマジマジと観察してみたんです。本当にガリガリで胸の膨らみもほとんどありません。お尻だって小さいし。 「なんで私ってこんなにガリガリなんだろうね?」と鏡の中の自分に尋ねました。 「じゃあ、この口紅つけてみたら?」と鏡の中の私が答えました。そしてピンク色の口紅を鏡越しに私に差し出してきます。 これは夢だ!と思い目をつぶり、もう一度目を開けると鏡の中の私は元通り、私と同じ動きをしました。でも、きちんとピンク色の口紅を手に持っていました。 私はほとんど化粧をしません。口紅だってつけたことありません。でも、手に持っている口紅はつけようと思いました。いや、つけなくてはいけないと思いました。 口紅をすっと唇になぞります。鮮やかなピンク色のラインが私の顔に描かれました。すると、どうでしょう。胸の中にお酢を飲んだ時のような感覚が広がりました。酸っぱいような、でもどこか甘みもあるような。この感覚は何だろう?と考えていると、自分の鼻息が荒くなっていることに気付きました。そして顔も体もほんのりあたたかくなってきます。 そろそろ服を着ようと思い、下着を拾いました。ブラジャーをつけようとしたとき、少しキツく感じました。よく見ると胸が一回り大きくなっています。ショーツも履くのがキツくて、お尻周りが大きくなっていました。なぜか、このピンク色の口紅をつけてから、私の体は丸みを帯びたようでした。 次の日仕事場に行って、あの胸に湧き上がってきた酸っぱい感覚の正体がわかりました。何度か話したことのある同僚の男性に恋をしていました。その男性が気になって目で追ってしまいます。目が合うとドキドキして目を逸らします。こんな感覚は生まれて初めてでした。好きになるという感覚を初めて知りました。 その後、めでたく彼と付き合うことになりました。ピンクの口紅をつける私を彼も好きなってくれたみたいです。世の中のカップルがすることを、私は初めて経験しました。デートに行って、手を繋いで、キスをしました。全てとてもドキドキしました。 でも、彼と体の関係を持とうとしたとき、障害が生まれます。挿入時の痛みを我慢できなかったのです。何度挿れようとしても、痛くて痛くて、挿れることができません。彼は笑って許してくれましたが、私は何度も謝りました。 その日ため息をつきながら、部屋の鏡の前に立っていました。 「どうしたら彼と一つになれるんだろう?」とまた鏡の中の私に質問します。 「大人の女性になるには、この口紅の方がいいよ」と鏡の中の私が答えてくれます。そして次は赤い口紅を渡してくれます。これはもう夢じゃないんだと思い、「ありがとう!」と私は鏡に向かって叫びます。でも、その時には鏡は元に戻っていました。 赤い口紅を唇につけます。本当に綺麗な赤色でした。つけた瞬間、あの酸っぱい感覚は消え失せました。その代わりバニラアイスのような甘ったるい感覚が胸の中に広がります。そして肩に重みを感じました。胸がさらに一回り大きくなっていました。谷間も作ることができます。もちろんお尻も大きくなっています。鏡の中に写る私は、妖艶でセクシーな女性でした。あのガリガリな女性はどこにもいませんでした。 次に彼と会った時、彼は私を一目見るなり、瞳孔を大きくさせ鼻息を荒くさせました。私の姿にすっかり興奮しているようです。私も赤い口紅のおかげで、心も体も高まっています。もうデートそっちのけで、貪るようにセックスをしました。もはや痛みなんて微塵もなく、挿入による快楽だけが身体を駆け巡ります。性行為による絶頂というものも初めて知りました。 家に帰ると、私は口紅を落とす。すると、また元のガリガリの女に戻る。本当の私はここにいる。でも、変身したいときがある。変身したいとき、私は口紅をつける。口紅をつけた私は彼にキスをせがむ。彼は優しく口紅にキスをする。
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