月曜日

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「そんなことないですよ。今は比較的調査の依頼が少ない時期ですから。むしろ食いっぱぐれちゃうんじゃないかって心配してたところに和彦さんから電話があって、助かりました。ありがとうございます」 「またまたあ。謙遜しちゃって」  二人の会話をなんとなく聞きながら、私は視線を机にできていた長細い影から上げた。青いケーブルニットに白のパンツを履き、脇にレザー製のクラッチバッグを抱えた男性が目の前に立っていた。  この人が、結城新仇郎さん、か。  黒縁の眼鏡がよくにあっている、爽やかな顔つきをした男性だった。色白で、シャープな顎の線も美しい。こういう人を、いわゆる最近はやりの塩顔イケメンというのだろうか。 「ああ、すまない。ずっと立たせっぱなしで。座ってくれ」 「失礼します」  結城さんは椅子を引いて私の向かい側へ腰かけると、ちょっとうしろをむいて「いつものをください」とバーカウンターに立っていた店長らしき人に言った。常連客なのか。 「あなたが今回の依頼者さん?」 「は、はい。木崎文と言います」 「大体の話は和彦さんから聞いてます。ストーカー被害にあってる、って」  周囲にあまり会話が聞こえないようにするためか、結城さんは体を前のめりにさせながらそう言った。私は紅茶が白い湯気を立てているマグカップを両手で包み、意味もなく指先を温めてから、 「……あの、でも私、ストーカーされる覚えなんて全然なくて。犯人に心当たりもありませんし」  そりゃそうだよ。今までの優し気な口調からは考えられない投げ出すような結城さんのその言いかたに、一瞬体が固まった。思わず彼の顔を凝視してしまう。
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