月曜日

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「ストーカーされる覚えも犯人に心当たりがないのも、君にとっては当然のことなんだよ。奴らはみんな総じて同じさ。たとえば親切心を好意だと勘違いするみたいに、君が知らないところで勝手に思いを募らせているだけだからね」  結城さんはそこまで言うと、椅子に背中を預けて大きく息をついた。首だけを動かしてすぐ横の窓に視線をやりながら、 「本当に愚かな人間たちだ」  そうぼそりと呟いた。小さいけれど、よく通るはっきりとした声だった。  私はもう一度彼の顔をじっと見つめた。やはりとても綺麗な容貌をしている。だからこそ、先ほどの彼のセリフを思い出すと徐々に体温が下がっていくようであった。美しい薔薇には棘がある。いくら精緻で見事な彫が刃に施されているナイフだとしても、それを剥き身のまま首もとにでも突きつけられたら恐ろしいに違いない。美しくてもそれは凶器だからだ。 「新仇郎くん、その言いかたは、ちょっと」  ずっと黙ってコーヒーをすすっていた和彦おじさんが、そっとソーサーにカップを戻した。眉間に薄いしわが刻まれているのが見える。おじさんの肌は結城さんと比べて黒い。健康的に焼けた小麦色の肌だ。 「ああ、すみません、つい。木崎さんには初対面で不快な思いをさせてしまったかもしれないよね。探偵は信用が命だっていうのに。僕ってだめだなあ」 「私は大丈夫です。気にしてませんから。それよりも」  一旦言葉を切り、机に額がつくんじゃないかというぐらい低く頭を下げる。 「これからよろしくお願いします。どうかストーカーの正体をつきとめてください」 「もちろんです。約束しましょう。僕が必ず、あなたをストーカーから守ります」
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