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「―――――――当たり前だ、そんなの。抜けさせてって言ったってそんなの認めないからな。怜兄ちゃんはいつだってずっと俺にとって家族だったんだ。これからもそれは変わらない。・・・俺はただ本当に、心配だったんだ・・・。怜兄ちゃんも、父さんのことも。けど俺、何もしてやれないからスゲー歯がゆくて、それでも父さんは心配すんな、ちゃんと見つけるからって・・強いなとは思ったけど、・・・でも怜兄ちゃんがいなくなって一番辛かったのは、心細かったのは父さんだった。――――――――いっつもくだらないことばっかり言って俺たちを呆れさせるような、そんな父さんがやっぱり俺の父さんだと思うし、その隣には・・・ちゃんと怜兄ちゃんにいてほしい。俺にとって、それが当たり前の状態なんだ。だから、だからさ・・・」 怜は耀が最後まで言い切るよりも早く、その言葉に頷き、そして答えた。 「―――――もう、自分だけの考えで逃げ出したり、相談もしないでいなくなったり、そういう皆を苦しめるような事は絶対にしない。・・・ありがとう。耀」 怜の言葉を聞き、耀は安心したように小さく息を吐いた。そして漸くそこで薄い、苦笑に近い笑みを口元に浮かべた。視線の先には心配そうな真人がいる。情けないほどバツが悪そうなその表情は、興奮しきってヒートアップしてしまったこの状況に、急激な羞恥が湧いたからだろう。 そそくさと席を立ち、顔を真っ赤にしたまま真人の隣に大きな体を小さく縮こまらせて座った。 耀の座っていた場所に京助が座り、怜の髪をポンと撫で、「めちゃくちゃ愛されてんな、お前」とからかうように言った。そして今度は真人に視線を向け嗾けるように言う。「――妬けるよな」と。 真人は小さく笑って首を横に振る。「―――愛され方の種類が違いますから」 京助は感心したような短い声を上げ、「お前、デキた嫁見つけたな」とやっぱりからかうように耀に言った。 「最低だ・・・。俺のさっきの言葉が全部音を立てて崩れていく気がする・・・。――――泣き損だよ・・・」 「何が”泣き損だよ”、だ。――――お前の泣き虫は今に始まったことじゃねぇだろって」 「ちょっと京さん・・・。耀、一応泣かない努力はしてるよ。ちゃんと言いつけ守ってる・・・やっぱり耀は強い子だね。苦しげに歪めた表情なんか・・・さすが親子、スゲー似てる」 「――――ん・・?あぁ、昨夜の話か。――――いやいや、耀は泣き虫ひかるくんだから、ちょっと突っついてやればすぐめそめそ泣くぜ?なぁ、耀」 目と頬を真っ赤にした耀がからかう京助をぎろりと睨み、「・・バカにすんなっ。つーか、怜兄ちゃんも一応とか言うな」と喚いた。 真人が「耀くんは感受性が強いんだよね」と、フォローにならないフォローをする。 京助は「おいおい・・・なんだその庇い方。フォローになってねぇし」と呆れた様に言い、真人が「あ・・ごめん。褒めたつもりなんだよ、ホントに」と焦った様に言った。 「―――そうやって弱い部分を見せ合える関係って・・すごく大事なんだよね。今回のことでホントよくわかった、俺・・・」 耀の不貞腐れた表情を困ったように見つめながら、怜が静かに呟いた。
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