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消えずに漂う張り詰めた空気感。けれど京助の無駄に明るい声がその雰囲気をガラリと変えた。
「―――――じゃあ、君たちにパパの秘密を教えてあげよう」
3人の顔をぐるりと見回し、京助がおどけたように言った。
まず最初に・・・、と隣に座る真人をちらと見て聞く。
「―――こんな泣き虫が恋人で大丈夫?頼り甲斐ないんじゃない?」
真人はぶんぶんと首を横に振り、
「そんなことないですよ、耀くんをすごく頼りにしてるんです、俺」
と、焦った様に早口で言った。
それを聞き京助はニッと笑い耀を見て、
「――――ふぅん・・こんな泣きべちょが頼りにねぇ・・・」
と言い、今度は耀に聞く。
「お前、もし万が一、真人君が今回の怜がしたのと同じことしたら・・・どうする?」
何かを試すように聞いた。
怜は一瞬肩をびくりと竦ませ、窺うように京助を見る。けれどその表情に怒りや嫌味の類は一切なくて、どこまでも純粋に息子の意見を聞きたいという父親の顔しかなかった。
少しの間、耀は口を開かずじっと真人を見ていた。そして、思い切るように言う。
「――――父さんと、同じ事・・・つっても、ガキだから限界はあると思うけど、でも、出来ることは何でもする。んで絶対どこまでも追っかけて探し出す。―――――父さんが怜兄ちゃんにどうしようもないくらい惚れてるのと同じで、俺も真人さんにどうしようもないほど惚れまくってるから。――――――だから、俺は怜兄ちゃんがいなくなってからの父さんの気持ちを思うと、胸が掻き毟られるって言うか・・・見てるこっちが辛くて叫び出したくなるって言うか・・・。――――はっきり言えば、何で父さんにこんな苦しい思いさせるんだよ、って気持ちは、すごくあった」
「・・・ごめん」―――消えそうな声で怜が言う。
「何度謝ったって足りないけど、ごめんなさい」。
「や・・違う、責めてるんじゃなくて・・・えぇと・・・、ちょ、父さん、何笑ってんだよ!俺が言いたいのは・・・」
「―――――好きなひとを。大切に思ってる人を悲しませるような事は二度としないで・・・。そういうことだよね?・・・・・・怜さん。俺は・・耀くんや京助さんには申し訳ないけど・・・怜さんの気持ち、わかる気がします。自分ひとりが我慢すれば、大切なひとたちを守れるって考えちゃう気持ち。―――――でも、それは一方通行の独りよがりでしかなくて、だれも幸せにはれないとも思うんです。・・て、あぁ・・生意気なこと言ってごめんなさい」
「・・・あ~ぁ、また怜の涙腺崩壊しちゃったよ。―――――けど、真人君の言う通り。わけもわからず取り残されちまった方は堪んねぇよ、ホント。自分の存在を全否定されたような気分になるもんな。俺ってそんな頼りなかったのか、ってな。しかしまぁ、こうやって怜はちゃんと俺んとこに戻って来たし、可愛い泣き虫の息子はパパを心配してくれてたし、その可愛い息子の美人なヨメさんも怜の気持ち理解してくれて・・・もう、言うことないよね。幸せだと思わねぇ?」
「―――――父さん、何ひとりで自己完結させてんだよ。つーか、秘密ってなに?話スゲー逸れてんじゃん」
ん・・?あぁ、秘密ね。と京助は少し考えるような素振りを見せて、思い切るように言った。
「――――――俺は、弱い。スゲー弱い男なんだよな、実は」
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