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「――――要するにさ。京ちゃんの頼りなさが悪いんじゃん」 怜を含めた職人たちが現場に行った後の事務所。事務方の打ち合わせを終えた瞬間、尚が確実に棘のある口調でそう京助に言った。 一瞬何を言われているのか理解できなかった京助が、顰めた顔で尚を見て、それからぐるりと首を回し翔太に向かい尋ねる。「―――――俺は今詰られているのか?」 「・・・たぶんな」。我関せず、といった涼しい表情で翔太は言い、図面を引いたり取引先へ電話を掛けたりと通常業務に取り掛かる。 「――――――さっきはちょっと感情が先走っちゃったけど・・・僕はね、突き詰めて考えると怜君は悪くないと思うんだよね。だってさ、彼の全部をひっくるめてモノにしたなら、彼を苦しめるだろう様々な障害はきっちりカタを付けておくべきだったんだよ。それをただ好きだ愛してる可愛い怜~・・・で浮かれて過ごしてきちゃった京ちゃんに責任があるんじゃないの?――――ていうか、それくらい先を読めないと守ってあげられないじゃん。・・・それでなくてもなかなか認めてもらえない関係なんだからさ、京ちゃん達って。―――まぁ僕らも含めてだけどね」 あぁ、そうか。なるほどな。そういう見方もあるよな。―――――と、京助は単純に感心する。 今朝、事務所に入った怜を尚以外の全員が笑顔で迎えた。 ―――無事でよかった。 ―――もう心配かけるなよ。 ―――休んだ分きっちり働け。 しかし、尚だけは笑う事もなければ、逆に怒っている雰囲気も全く示さなかった。 ただ無表情に怜を約30秒、じぃ・・っと見据え、大きな溜息を吐き、「―――バカだよね」と吐き捨てるように言った。 事務員や職人たちは「えっ?」という戸惑った表情を浮かべ、翔太は「おいおい・・」と苦笑い、京助に関しては心の中で、いつ助け舟を出そうか・・・と展開を見守る姿勢を見せていた。 怜は尚のその言葉に小さく頷き、気を悪くするでもなく、それどころか嬉しそうに笑って答える。 「―――――うん。バカだった、俺。・・・尚くん、ちょっと気合い入れ直してく―――――――――ッ?!・・・っでぇ・・・」 言い終わるよりも早く、尚の振り上げた手が怜の額に振り下ろされて、その衝撃に怜の口から反射的に呻きが漏れた。 数秒の沈黙があり、次に・・・、その場にいた全員が盛大に笑いだす。 事務所内にややしばらく笑い声が満ちて、無言のまま尚が一番大きな声で笑い続ける京助の肘の辺りを、怜に振り上げたのとは逆の手でべしべし叩き、不満そうに睨み上げていた。
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