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社長室のドアがノックされ、京助が短く答え入室を促す。 「――――京さん。まだ終われない・・・?――――みたいだね」 仕事を終えた怜が顔を出し、机の上に広がった資料や図面に目を丸くする。 「んー・・だな。まだかかりそうだな。悪ぃけど先に戻ってあいつらのメシ、頼めるか?」 「もちろん。―――――京さん」 「んー?」 「ごめんね」 怜の言葉に京助が視線を上げて、何事だ?みたいな表情で怜を見つめた。 「・・・何、言ってるんだよ怜。これは別にお前がどうとか、そういうんじゃ・・・」 「でも・・・俺があんなことしなきゃこんなに仕事溜まったりしなかったでしょ?だから・・」 「んなことねぇよ。これはどっちみち今日やっとかなきゃいけねぇやつだったんだし。―――――怜。ちょっとこっち来いよ」 申し訳なさそうに扉の前に立つ怜を、京助が穏やかに笑って手招いた。 24 伸ばされた京助の手に触れ、そのまま引き寄せられて膝の上で横抱きにされた。 斜め下から優しく綻ぶ口元を見つめ、怜は首を傾げる。 京助が自分を抱えたまま、どこかに電話をかけ始めたから。 「――――おぅ、耀か?パパですよー・・・、って何だよ、冷てぇなぁ、お前。俺のこと大好きなくせに・・・、あぁ、待て待て待て、切るなって!――――ハイ、ごめんなさい。ふざけすぎました。―――――――え?あ、本題ね。・・・うん。俺と怜、今日残業~。・・・うん、そう晩メシの件。ふたりで何かテキトーに食って。もし食いに行くなら会社に寄ってけ。金渡すから。・・・熊野庵?デート?アホか。デート代を親にせびるな。――――――ハイハイ、んじゃ5分後な」 苦笑いで受話器を置いた京助に、怜が「どーしたの?」と不思議そうに尋ねる。 「ん?―――あぁ、耀に晩メシ外で食えって言ったら、真人君が行きたがってる店・・えーと」 「・・熊野庵?」 「そうそう、それ。そこに連れて行きたいんだと。夜のコースが3000円で割とお手頃価格だからとか言いやがってよ。コーコーセーの分際で生意気なんだよ、アイツ」 「―――そーゆーとこにばっかり連れて行ってた京さんの影響でしょ・・・。―――耀、ファミレスで満足できる舌は持ってないんだよ、父親のせいで」 「はぁ?んなわけねぇよ。あいつの大好物、ハンバーグだぜ?超お子ちゃま舌の持ち主だって」 「・・・チェーン店のハンバーグをマズイって言う高校生なんていないよ」 「・・・?そうなのか?ハンバーグのチェーン店って牛のマークだろ?あの店にはよく連れて行ったけどな」 「え?そうなの?だっていつだったかふたりで出かけた時、昼メシそこに行こうとしたら耀、”あの店は好きじゃないからやだ”――って・・・」 「ふぅ~ん。わかんねぇけど、好みが変わったんじゃねぇの?――――――つーか、別に耀の好き嫌いはどうでもいいんだよ!」
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