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◇あかりの寝室◇
目の前にいる男を睨みつけ、拳を握った。
「お前さえいなければ、きっと何もかも上手く行ってたのにな」
傍らにはベッドで寝息を立てて、休むあかりがいる。
最近はいつも二人でお風呂に入り、
その後、彼女を寝かしつける。
その寝顔を見る度に想う、彼女は美の女神の様だと。
「あかりは本当に綺麗だ。心も体も」
そして、再び視線を戻し、男の姿を確認すると、
沸々と怒りが込み上げてきた。
力の入り過ぎている右手は、悲鳴を上げているかの様に震えている。
「あかりはどこまでも自分の欲求に真っ直ぐで、純粋で。
…………それに比べて、お前は本当に汚れているよな」
憎々しい男の姿に、耐え難い衝動が巻き起こり、
男を殴りつけようとしたが、思いとどまった。
「壊したら、あかりが起きちゃうだろ………馬鹿が」
見つめる先の、鏡に映った男は悲しげにそう言った。
そして、愛しい女神の頬を撫でた。
「おやすみ、あかり」
そう呟いて、そっと彼女の唇に唇を重ねた。
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