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子どもみたいな人なんです。
胸が痛んだ。
私だって、冥界で父と向き合った時には姉と同じことを考えた。
姉の気持ちも分からなくはない。
姉の結婚が決まった頃、父は既に無気力状態だった。
両家の顔合わせも式も、あれでは義兄の親族に顔が立たなかっただろう。
さらに父は、ほどなくして誕生した孫にも無関心だった。
しかし、散々な言われ様を目の当たりにすると少々気の毒にもなってくる。
意地悪せずに教えてあげれば良かった、六文銭のこと。
まあ、どっちみち葬儀屋さんが準備するんだけど。
しまった、勝手に殺してはいけなかった。
見極めるのはタカムラだ。
「あんたたち、二人とも父親っ子だったくせに……」
母がポツリと漏らした。
そうだった。子どもの頃は父が大好きだった。
夫婦のちょっとした言い合いも、私は無条件で父の味方だった。
楽しかった。
一緒に子どもでいれば良かったのだから。
父は何もしない代わりに、私と姉が何をどれだけサボろうと怒ることはなかった。
今思えば、母のストレスは相当のものだったろうと思う。
気がついたのは、いつのことだっただろう。
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