子どもみたいな人なんです。

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 一緒に遊んでくれるお父さんではなかった。  遊園地や動物園に連れて行ってくれるお父さんではなかった。  友達に、何度悲しい嘘をついたか分からない。  子どもの目線にいたけれど、頼れるお父さんではなかった。  そのうち、私が子どもの目線ではなくなっていた。  その後の父を、何故思い出せないのだろう。  いつの間にか父は、家の中でぼんやりと座っていた。  澱んだ空気が見えるようで、ひたすら嫌悪した。  隣で泣き伏す姉を見遣る。  母の言う通り、先立つものがなければ立派な式は挙げられなかった。  私にも言えることだ。  学費も生活も。  父の帰りはいつも遅かった。  情けないところもあるが、父は懸命にこの家を支えていたのだ。  私が社会人になるのを待っていたみたいに、父は空っぽになった。  「お父さん……」  身体の底から振り絞ったはずの声は掠れて、手の甲に涙が落ちた。      
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