22人が本棚に入れています
本棚に追加
冥界、再び。お父さんの見極めは。
人気のない階段の踊り場へ出ると、寝不足でフラつきながら鞄に腕を突っ込んだ。
母と姉には、一応職場に顔を出すと言ってある。
父の見極めの順番が回るかもしれないと思うと気が気でない。
私が行ったところで、運命が変わる訳ではないけれど。
「お父さん!」
私が再び冥界に入った時、父は丁度タカムラの机の前に立ったところだった。
ぼんやりとした顔でこちらを振り返る。
良かった、まだ身体は透けている。
と思った途端、足元から徐々に父の身体がハッキリし始めた。
「待って!」
まだ伝えていない。
六文銭の件と、ありがとうを。
私が駆け出すと同時に、タカムラが羽扇を翳した──。
最初のコメントを投稿しよう!