今度こそ、お別れです。

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今度こそ、お別れです。

 「大往生であるな」  羽扇を翳したタカムラは、微笑んでいるように見えた。  あれから五年経って、父は七十代前半。  現代ではそう長生きな方でもないかもしれない。  タカムラは、運命を見極めた後は必ず大往生だと言う。  羽扇を翳す彼の横顔は、いつも悔しいくらいに美しい。  「人生捨てたもんじゃなかったな。娘に見送ってもらえるんだから」  全く透けていない姿で、父は言った。  五年前みたいに、しょぼくれてはいなかった。  タカムラから見極めを受けた人は、誰もが晴れやかな顔をしている。  今度はきちんと伝えられた。  六文銭のことも、ありがとうも。  「まあ、みんな元気でやってくれよ」  それが最後の言葉だった。  曇天に吸い込まれる火葬場からの煙を、家族で見上げた。  いつかまた冥界の入り口で、私は家族を見送るだろう。  そうして、いつか私も老いて。  宣告を受ける。  とうの昔に人ではなくなった、老いることのない美しい存在に。  そこまで恐くはない。  タカムラの見極めならば。  少し。いや、かなり情けないところのある父が先に通った道であれば。  
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