二人だけの時間

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 結城さんのおかげで、その日のレポートはとても良い評価を得た。結城さんは勉強を教えるのがとても上手い。きっと会社でも部下の人に対して、的確な指示を出しているんだろうな、って思う。  レポートの結果を結城さんに報告したら、彼は物凄く喜んでくれた。「なぎさ君が頑張ったからだよ!」って言って笑ってくれた。いきいきとした表情で。そのことが俺は嬉しかった。  それからというもの、結城さんと俺は時間を共有することが多くなった。  俺の家で結城さんはアイスレモンティーを飲む。飲みながら、俺のレポートを一緒にやる。不思議な時間。評価が上がるレポートに対して、俺が作るレモンティーは進歩していない。けど、結城さんは「美味しい」って言ってくれる。  どうしてだろう。  結城さんの笑顔は、俺の心を落ち着かなくさせる。  どきどきして、変な緊張を運んでくる。  こんなの、まるで、結城さんに夢中になっているみたいな……。 「なぎさ君。ここの文章なんだけど、こう直した方が良いと思うんだ……なぎさ君?」 「あっ! はい! そうします!」  ふわり。  結城さんは良いにおいがする。  出会った時とは大違いだ。あの時は、ゴミ捨て場で転がっていたから仕方が無いけど。  素敵な大人。  優しくて、頼りになって、ちょっと繊細……もっと、結城さんのことが知りたい。近付きたい。そして、触れ合って――。 「っ!」 「なぎさ君、どうしたの? 疲れた? 休む?」  邪な考えが浮かんでしまった俺を見て、結城さんは心配そうに俺の髪を撫でた。触っちゃ駄目! 今は、触っちゃ駄目! 「お、俺、眠気覚ましにコーヒー飲みます!」  どきどきと鳴る心臓を落ち着かせるために、俺はキッチンに逃げ込んで熱々のコーヒーをがぶ飲みした。  恋に味があるのなら、きっと言葉にならないくるくるした味。そう思った。
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