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手のひらの温度
「明後日って時間ある?」
「えっ?」
レポートを完成させて一息ついた俺に、結城さんが訊いてきた。
明後日といえば、クリスマスイブだ。
「ありますよ。夜、遅くなっちゃうかもしれないですけど……」
イブとクリスマス当日は、言い方は悪いがカフェにとって一番の儲け時だ。父考案の「クリスマス・セット」は毎年好評で予約がすでに埋まっている。味見させてもらったことがあるけど、チキンの味付けは最高に美味しかった。さらに最後に出てくるケーキも甘くて口の中で溶ける。ちょっと値は張るけど、それだけの価値はあるメニューだと思う。
店が混むから、俺は手伝いをしなければならない。営業時間が終わるのは、いつもより遅い午後十一時くらいになるだろう。
そのことを結城さんに伝えると、彼はうーんと眉間にしわを寄せる。
「忙しいよね。ごめんね、変なことを言って」
「いえ。あの、明後日に何かあるんですか?」
結城さんにそう訊くと、彼はほんのりと頬を染めた。
「いや……なぎさ君と、その……イブとクリスマスを過ごしたいなって思って」
「えっ?」
「いや、ごめん……忘れて? ご、ごめんね。僕みたいな暇人が馬鹿みたいなことを言って」
過ごしたい。
俺も、結城さんと楽しい夜を。
そうだ! と、俺は結城さんに提案する。
「うちのカフェで夕飯を食べませんか?」
「えっ?」
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