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目を丸くする結城さんに俺は続ける。
「クリスマスのメニューはもう予約でいっぱいだけど、普通のメニューなら大丈夫です! 席は……まぁ、なんとかなると思います! ね、そうしませんか?」
「あ……なぎさ君がそう言うなら……」
「それじゃ、俺、父にそうして良いか訊いてきますね! ちょっと待ってて下さい!」
ぽかんとする結城さんを残して、俺は上着も着ないままで家を飛び出した。結城さんに喜んでもらいたい。その気持ちで心がいっぱいだった。
***
父にイブの話をすると、意外にもすんなりとオーケーをもらえた。カウンター席になってしまうけど、大丈夫だって。結城さんひとりに食事をさせるのは何だか浮いてしまうからって、俺も一緒に食事を取ることを許可された。「クリスマス・セット」の材料をちょっと使った特別メニューだって! 楽しみで仕方が無い。
許可を取れたことを結城さんに説明すると、彼は俺が作ったアイスレモンティーを飲みながら「ありがとう」と柔らかく笑った。
「なぎさ君って、行動力があって格好良いね」
「えっ?」
行動力?
いや、俺はただ、結城さんに喜んで欲しいって気持ちがいっぱいなだけで……。
「べ、別に普通ですよ」
「ふふ。あ……でも、良く考えたら大切なイブを僕のために使わせてしまうなんて申し訳ないな。ガールフレンドに叱られない?」
が、ガールフレンド!?
そんな関係の人、居ないし!
「俺、毎年重要イベントはフリーですよ!」
「あ、そうなの? それは……良かった」
結城さんは目を閉じて微笑む。大人っぽいその表情に、俺の心臓がどくりと鳴った。
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