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カフェを出て俺たちはタクシーで結城さんのマンションに向かった。タクシーなんて滅多に乗る機会が無いから少し緊張した。
たどり着いたのは、立派な建物、かと思っていたら意外と普通のマンションだった。中に入っても、豪邸、といった感じではなく、ごくごく普通のドラマとかで良く見るような広さの部屋だった。社長さんだからといって、贅沢な暮らしはしていないんだなぁ……。
「もっと、大きな家を想像した?」
「へ、へっ!?」
考えていたことを指摘されて、俺は思わず肩を跳ねさせた。そんな俺を見て結城さんは笑う。
「独り暮らしは、普通の広さの部屋で良いって思ったんだ」
「あ、なるほど」
「一緒に暮らす相手が出来たら広いところに引っ越さないといけないけどね」
「ここでも、十分に生活できそうです」
「うーん。ま、格好つけたいんだ」
そういうお年頃なんだよ、と結城さんは笑う。俺はどう返して良いか分からなかったのでとりあえず息を吐いて笑っておいた。
「さて。なぎさ君」
「はい」
「実はね、冷蔵庫にショートケーキがあるんだ」
とことこと歩いて、結城さんは冷蔵庫から二つのショートケーキを取り出した。純白の生クリームに鮮やかなイチゴ。それに、小さなチョコレートのプレートみたいなやつが刺さっている。
「まだ、お腹入る?」
「もちろんです。俺はまだまだ育ちざかりなんで」
「ふふ。若いって良いなぁ」
結城さんはケーキを置いて、グラスを出しながら言う。
「それじゃ、アイスレモンティーを作って欲しいな。とっておきのやつ。お願い」
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