手のひらの温度

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 いつもの手順でアイスレモンティーを作る。結城さんが用意しておいてくれた紅茶とレモンを使って。  ケーキもそうだけど、レモンティーの材料を買っておいてくれたってことは……最初から俺とここで過ごそうと考えていてくれたの……?  どうしよう。  凄く、どきどきする……。 「お待たせしました」 「ありがとう」  一緒に飲もうよ、って言われたから、俺の分のアイスレモンティーも作ってグラスをテーブルに並べる。そして、軽くグラスを合わせて乾杯した。 「あ、美味しいです! このケーキ!」 「ふふ。良かった」  甘すぎない生クリームはレモンに合った。  これは、今日食べたうちのカフェのケーキの負けだ。有名な店のやつなのかなぁ……結城さんなら、美味しい店をいっぱい知っているだろうし。 「……なぎさ君はさ、男らしいよね」 「え?」  夢中でケーキを食べていると、不意にそんなことを言われた。俺はフォークを動かす手を止めて結城さんを見る。彼は少し俯いて、アイスレモンティーのグラスを見つめていた。 「行動力があって、優しくて、器用で……」 「そんな、俺は、そんなに出来た人間じゃ無いですよ」 「そんなことないよ。凄く頼もしい。出会ってまだ短いけど、僕の心を修復してくれた」  修復……じゃあ、もう結城さんは大丈夫ってことなのかな。  もう、俺がレモンティーを作る必要も無くなったってことなのかな。  そんなの、嫌だ。  俺は、もっと結城さんと一緒に居たい。  結城さんのことを、もっとたくさん知りたいよ……。
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