手のひらの温度

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「……は? え……?」  いきなりの告白。  俺の頭はついていけない。  ぱくぱくと口で呼吸していると、俺のくちびるに結城さんの人差し指が当てられた。 「なぎさ君は、僕のことどう思ってる?」 「……え?」 「知りたいな……」  結城さんの瞳にとらわれて、俺は身動きが取れなくなった。  優しいけれど、鋭い目。  ずるい。  結城さんって、こんな表情もするんだ……。 「な、なんて言うか……」 「うん」 「俺は、結城さんのことがもっと知りたくて……」 「うん」 「だから、いっぱい会いたくて、これからもずっと一緒に居たいなって……」 「僕のこと、好き?」 「えっと……たぶん」 「好き?」 「……好き、です」  そう俺が告げると、結城さんは俺をもっとぎゅっと抱きしめて「やっと聞けた」と呟いた。 「嬉しいな。たぶん、っていうのが気になるけど」 「だ、だって、こんな気持ち初めてで……」 「だから、時々落ち着かない様子だったの?」 「え?」 「僕を見つめる瞳が熱いなって、思う時があったから」  気持ち、バレバレだ。  恥ずかしい!  肘で顔を隠そうと動いたが、俺の手は結城さんに簡単に絡め取られる。 「僕たち、まだお互いのこと全然知らないけど、恋って落ちるものだろう?」 「そ、そうなのですか?」 「なぎさ君、僕は君とお付き合いがしたい……恋人として」  駄目かな? って言いながら、結城さんは俺の手のひらをそっと握った。熱い。俺のどきどきと結城さんのどきどきが重なる。繋いだ場所から溶けてしまいそうだと思った。 「お、俺でよければ……よろしくお願いします」  やっとの思いでそう返せば、結城さんは「ありがとう」と言って、もう一度俺を抱きしめた。
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