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苦くて甘い
恋は甘酸っぱいって聞いていた。
でも、俺が今、感じている味は甘くない。きっと、砂糖を入れていないからだ。
「……ん」
結城さんのくちびるから伝わる味は、ちょっと苦みのある紅茶とすっと鼻を抜けるレモンの味。あ、でもちょっと甘いかも。ケーキの味かな。きっとそうだ。
「結城さん……」
「なぎさ君、可愛い」
俺はソファーに凭れている。凭れた俺に覆いかぶさって、結城さんがくちびるを寄せる。
初めは触れるだけだったキスは、だんだん大胆になって舌を絡め合うやつに変わった。俺はこういう経験が無いから、結城さんに身を委ねっぱなし。息継ぎの仕方が難しくて苦しいけど、快感を拾った身体はどんどん熱を持っていった。
「ふ、っ……」
「……ごめん、いきなりがっついちゃった」
結城さんが俺から少しだけ距離を取る。彼の息はあんまり乱れていなくて、ああ、大人だなぁって思った。
「今日はこの辺でお開きにしようか。送って行くよ」
「……え?」
送って行くって、俺を家に帰すつもり……?
あれ? キスの流れで、その、もっと先に進んだりするものじゃないの?
恋愛初心者の俺は、素直に思ったことをぶつけることにした。
「あの、泊まりたいです」
「……えっ?」
「せっかくの特別な日なんです。もっと結城さんと居たい……駄目ですか?」
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