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俺の言葉に、結城さんは困ったように笑った。
「簡単に、男の部屋に泊まりたいなんて言っちゃいけないよ」
「俺だって男です」
「それはそうだけど……」
「帰りたくない」
俺は傍にあったクッションを抱きしめて、上目遣いに結城さんに言う。すると、彼は俺の耳元で少し掠れた声で囁いた。
「……泊っても良いけど、寝ているなぎさ君に僕は何をするか分からないよ?」
俺は驚く。だって、そんなの。
「えっ? しないんですか?」
「え?」
「いや、だってキスしたし、次は……そういうことでしょ?」
沈黙。
あれ? 俺、間違ってる?
固まる結城さんに、俺はおそるおそる声を掛けた。
「あの……俺、妹の部屋にこっそり忍び込んだことがあるんです」
「……悪いお兄ちゃんだ」
「恋愛について勉強しようと、少女漫画を読ませてもらおうと。そしたら……」
「そしたら?」
「お、男同士の恋愛の漫画が置いてあって……」
「な……!」
妹にバレたらたぶん俺はボコボコにされる。その秘密を俺は結城さんに話した。
「その漫画では、両想いになったカップルはキスした後ですぐにベッドに行ってくっついていて……」
「そ、そう……でも、それは漫画だろう?」
「結城さんはそういうパターンの恋愛はしたこと無いですか?」
「無いことも無いけど……」
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