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男性と父では足の長さが違ったようで、部屋着の丈が合っていない。どうにかしてあげたいけど、俺のやつだと余計に短くなってしまう。ここは、スーツが渇くまで我慢してもらおう。
「あ、ドライヤーの場所……」
「このまま放っておいたら乾くよ」
「いえ、そういうわけにはいきませんよ」
男性の髪はしっとりと濡れている。俺は洗面所からドライヤーを引っ張り出してリビングのコンセントに繋いだ。
「これ、使って下さい」
「……」
「じゃあ、俺が乾かすから座って下さい」
「……分かった」
男性はソファーの下の床に座った。なので、俺はソファーに腰掛けて男性の背後から髪を乾かす。髪は黒くて艶があるけど、毛先が少しだけ痛んでいた。
「……」
「……」
無言だ。
気まずい。
俺は必死で話題を探した。
「その部屋着、小さいですよね。それしか無くてすみません。もうすぐスーツ洗い終わるんで、乾燥機にかけますね」
「……ありがとう」
「そういえば、あれ洗えるスーツですよね? 確認しないで洗っちゃいましたけど」
「……どうだろう。いつもクリーニングに出していたから分からないな。作った店に訊いてみないと」
作った、店?
なるほど、オーダーメイドってやつか。
ん? それって……もしかして、かなり良いお値段のものなのでは!?
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