追悼

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 ねぇ、君が家に来たときの覚えてますか?    君は元気いっぱいで、ケージのなかをぐるぐる回りながら、時折ケージの壁に足を掛けてこちらを見ていましたね。    私はそれがすこし怖くて、すこし離れたところから君を見ていました。爪が折れちゃうよと言った瞬間のポカンとした表情を、私は今も覚えています。  君が来て少し経った頃のことを覚えてますか  君がいることに慣れてきて、君の頭を撫でようとした瞬間、君は私の手に噛みついてきました。後にそれが甘噛みだったと知ったけれど、噛まれるということを知らなかった私は叫びながら逃げました。  君が私を噛もうとしたのは、覚えてる限りそれだけです。  初めてブラッシングしたときのことを覚えていますか。  初めて散歩につれていったときのことを覚えていますか。  初めて私がご飯をあげたときのことを覚えていますか。  初めて苦い薬を飲んだときのことを覚えていますか。  脱走したときのことは  かけっこしたときのことは  夜中全力で吠えてたときのことは  裏の家の子が脱走して家に来たときのことは  焼いたクッキーをあげたときのことは  怪我してしまったときのことは  病気になってしまったときのことは  覚えていますか  ずっと覚えていましたか  つらいことも痛かったことも、楽しかったことも嬉しかったことも、全部最期まで覚えていましたか。覚えていてくれましたか。  認知症になってしまった君。 私のことも忘れてしまったかもしれない君。 家族のことも、どれだけ覚えていてくれたかわからない君。 でもどうか覚えていてください。 なにも覚えていないまま逝かないでください。  君が私たちの家族でいてくれたこと、これだけの思い出があったこと、最期は叱ることも多かったけれど、それでも確かに愛してたこと。確かに君が大事だったこと。  どうか覚えていてください。  私も決して忘れません。  君が大好きだったことを。  君が苦しんでいるのを見て悲しかったことを。  冷たく硬くなった君を持ち上げて、死んでしまっていたことがわかって、声をあげて泣いたことを。  決して決して忘れません。  今日、死んでしまった君。  私たちの大切な愛犬。  どうか忘れないで。どうか覚えていて。  どうか向こうで幸せに。  どうかたまには会いに来て。  どうか君との思い出が、薄らぐことのないように。すべてをこめて、さようなら。  いつまでもずっと愛してます。  おやすみなさい。
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