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「ねぇ、覚えてる?」
「うん」
「ちょっと!何が?って聞いてよ!絶対適当に返事したでしょ!」
突然なんの脈略もなくあたしはそう言ったんだから、分かるわけがない。
何がって聞かれるのを待っていたのに。
相変わらず目を合わせてくれないその人は、今日も気怠そうに髪をかき上げている。
髪をかき上げると、かっこいい顔がよく見える。彼が実はこんなにかっこいいと言うことを知ってるのはあたしくらいだろう。
「音無くん。明日が約束の日だよ?本当に覚えてるの?」
「何?君は僕がそんなに記憶力悪そうに思うわけ?」
ムスッとした顔のまま背を向けて、音無くんは机の上に置いてある、譜面に手を伸ばした。
明日でこの2人の時間も……終わりなんだね。
音無くんは寂しくないのかな?
明日は卒業式だよ?
卒業したら……繋がりのないあたし達は、もう会うことはないでしょ?
音無くんがあたしと話してくれるのは、この学校の、この図書室でだけだ。
この図書室だけが唯一の繋がりなのに。
明日でこの繋がりも終わってしまうのに。
いつもと変わらない音無くん。
やっぱり音無くんは、あんな約束忘れてるのかな。
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