【完】音無くんは、今日も図書室で歌う

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思い返して痛感する。 悲しいことに、あたしと音無くんは、図書室という場所だけで繋がっているんだ。 卒業は明日。 あたしのことなんてすぐ忘れてしまうんだろうな。 そう思ったらすこし寂しくて、悲しくて、とうとう尋ねてしまった。 「ねぇ、覚えてる?」 曲を作ってくれるって言ったの、覚えてるのかな。やっぱり忘れたよね。色々な気持ちが混ざり、「ねぇ、覚えてる?」という曖昧な問いしか出来なかった。 嫌なら言ってくれればよかった。 面倒だから作らないと言われれば諦められたのに。作るだなんて言うから…… なのに何が?とも聞かずに「うん」と答える音無くん。 僕が記憶力がないと思うわけ?と謎に怒られてしまったけど、しょうがないじゃん。 音無くんだもん。 名前も呼んでくれないもん。 目も合わせてくれないもん。 その「うん」だって、適当に答えたように感じてしまうよ?忘れられてるんだなって思うよ。 「明日卒業式だから準備があるらしくて、先生に今日は図書室から早く出てくれって頼まれた。だから僕は帰る」 いつもより2時間も早く、音無くんは帰ってしまった。 小さくなる後ろ姿。 いつもここで歌っている音無くんの後ろ姿を見ていたけど、全然違う。 遠ざかる姿は見てられなくて目を逸らした。
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