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その歌声で開けっ放しで歌う?普通。
そんなことを言いながら音無くんが図書室に入ってきた。
「どうして?帰ったんじゃないの?」
「……なに?」
不機嫌そうにこっちを見る音無くん。どうしてそんな顔をしているの?
「君を探しにきたんだけど。帰ってない」
「嘘!教室にいなかった!」
「……図書室の管理をしてた、他学年の先生に挨拶に行ってただけだよ」
そ、そうなんだ。
帰ってしまったのかと思ってた。
音無くんは、図書室のカウンターに立て掛けてある、ずっと弾き続けてきたギターに手を伸ばす。
そりゃ、これを置いては帰れないか。
音無くんはギターを持って、初めて出会った時のように、本の貸し出しカウンターにヒョイっと座った。
えっと……
「はい、これ」
音無くんが一枚の紙を渡してきたので受け取る。
そこには音無くんの字で何か書いてある。
「これは…」
「1回目って歌詞は聞き取りにくいだろうから」
たくさん文字が書いてあるこの紙は、歌詞……なの?
音無くんはいつもと変わらず片脚をあげて、大切そうにギターを抱えた。
初めて見る歌詞
これってもしかして……
声をかけようとしたけど、音無くんの指が動いたから、ハッと口を押さえた。
そして今日も綺麗な指がギターを奏で始めた。
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