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音無くんは、独特の雰囲気が漂った男の子だった。まぁ、一言で言えば暗い。そんなイメージしかない。
ノーセットの髪型は、目が隠れるほど長い前髪が特徴的で、誰かと話しているのさえ見たことないから、声を聞いた事がなかった。
そんな音無くんが、まさか今……歌っていたの?
音無くんはそのままあたしから視線を外し、何も言わずに机の上に広がる紙を、手で掻き集めている。
無視?まぁ話したことないけど、一応クラスメイトなんだけどな。
「どうしてここに居るの?」
純粋な疑問だった。
あれだけ綺麗な歌声なんだ。きっと音無くんは歌うことが好きなんだろう。
でもそれなら、音楽室とかに行くものじゃないのかな?
あとは開放感ある屋上とかさ?その方が気持ちいいじゃん。
わざわざ図書室で歌う理由は?
図書室って、静かにするっていう暗黙の了解があるじゃん。誰もそこで歌おうだなんて思わない。なのにどうして?
そう言う意味も込めて、どうしてここに居るのか尋ねた。でも帰ってきた答えは、あたしの望む答えじゃなかった。
「どうしてって、僕、図書委員長だから」
……えっと。そういうことじゃないんだけど。
音無くんは本を貸し出しするカウンターにトコトコ歩いて座った。
あれ?もう歌わないのかな。
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