【完】音無くんは、今日も図書室で歌う

3/18
前へ
/18ページ
次へ
音無くんは、独特の雰囲気が漂った男の子だった。まぁ、一言で言えば暗い。そんなイメージしかない。 ノーセットの髪型は、目が隠れるほど長い前髪が特徴的で、誰かと話しているのさえ見たことないから、声を聞いた事がなかった。 そんな音無くんが、まさか今……歌っていたの? 音無くんはそのままあたしから視線を外し、何も言わずに机の上に広がる紙を、手で掻き集めている。 無視?まぁ話したことないけど、一応クラスメイトなんだけどな。 「どうしてここに居るの?」 純粋な疑問だった。 あれだけ綺麗な歌声なんだ。きっと音無くんは歌うことが好きなんだろう。 でもそれなら、音楽室とかに行くものじゃないのかな? あとは開放感ある屋上とかさ?その方が気持ちいいじゃん。 わざわざ図書室で歌う理由は? 図書室って、静かにするっていう暗黙の了解があるじゃん。誰もそこで歌おうだなんて思わない。なのにどうして? そう言う意味も込めて、どうしてここに居るのか尋ねた。でも帰ってきた答えは、あたしの望む答えじゃなかった。 「どうしてって、僕、図書委員長だから」 ……えっと。そういうことじゃないんだけど。 音無くんは本を貸し出しするカウンターにトコトコ歩いて座った。 あれ?もう歌わないのかな。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加