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ごめんね、嘘だよ。
そう言おうとした。冗談だって笑わなきゃ。
何言ってんの?そんな風に言われたら立ち直れないから。困らせてしまうのは嫌だし、冗談だと流せば、傷つかずに済むから。
なのに音無くんは言った。
「少し時間ちょうだい。卒業までに作るよ」
え?
驚き過ぎて声が出た。
自分の耳を疑った。
音無くんにさっきの事って……
そう聞きたかったけど、聞いて面倒くさがられても嫌だから、その後あたしは戸惑ったまま、何も聞けなかった。
次の日図書室に行けば、いつも通り音無くんは自分でギターを弾きながら歌っていた。
その歌は何度も聴いた曲。
音無くんが、この曲は1番最初に作った物だと教えてくれた。
歌のことなら音無くんは少し話してくれる。自分のことや、ありきたりな話は絶対してくれないけどね。
あたしはその音無くんの初めて作った曲が好きだ。初めてこの図書室に来た時も、音無くんはこの曲を歌っていたから。
この曲を歌う音無くんに惹かれたから。
あたしもいつも通り、音無くんの斜め後ろの席に座り、眺めていた。
音無くんは歌っている時、楽しそうだな。
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