第二章

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第二章

「えっ・・名前が違うんか?」 20歳の誕生日を目前に明は、衝撃の事実を歩夢から聞かされていたはずだった。 「名前と違う!苗字や・・だから伊集院は俺の苗字で。」 おい!聞いてるのか?聞いていないよ・・・ 「名前って明やんか~私な今風の名前がよかってん。」 「残念ながら明は明や!」 「名前って言うからさ・・。」 何だ~と興味なさげに言う明に頭を抱えてしまう歩夢。 東条誠一は、落ち着きのある男だったし妻のマリアは医師免許をもつ才女だったのに・・その娘は確かにIQは高いがなぜこうなった? 落ち着きがないというか、人の話を聞かない。 「だから、お前はもうすぐ20歳になるだろう?だからだな!ちゃんと教えておこうと思ったんだ!!」 あの事故から歩夢は、明を伊集院 明として育てた。 あの頃、東条家はかなり反対したが自分の息子が事件に係わっていた証拠と人には、言えない事に手を出していたから現在は容赦なく逮捕され懲役刑をうけている。 マスコミに出なかったのは、東条が金と権力で押さえつけたのだと推測される。 ただ実行犯のはずの榊原は、海外に逃亡して今だ捕まっていない王もかなり追跡したが、支援者がいたようだった。 「必ず総裁になってみせます。」 その言葉通りにワン・リーレンは現在総裁の座についている。 「明が20歳になった時に彼女を迎えにいきます。」 これについては、まず明を東条 明に戻す必要があった。 東条家にもリーレンにも明の成長と動画を送ってはいたが、歩夢自身が調査した結果いまだに懸念材料があった両家は、泣く泣く明の養育を歩夢に任せて、明と自分達の直接的な関係性を公にしなかった。 明が大学生になり大学で仲のいい友人が出来たのとネットゲームにはまり歩夢からみても「オタク」の領域になっていた。 「まったく誰に似たんだ?」 「アユだな・・・うん。」 俺の名前が「あゆむ」だからアユと明は最近俺を呼ぶ。 「本題だが戸籍も本当は変えてないかた明は「東条 明」なんだよ。両親の話はしたろ?」 「うん。聞いたよ~東条の御爺様の話もね。」 だから何?という顔をしているが東条家の爺様もいい年だから会いたいだろうと俺は思っていた。 「伊集院でも東条でも別にいいねんけど、こだわりはないし。」 こだわれよ!と俺は思うがこの子は、基本拘りが偏っているように思う。 今まで友達と上辺は上手く付き合っていたようだが、親友という存在はいなかったが、最近大学で出会った佐伯 美鈴という女の子と 仲がいい。 頭の良い子らしく語学力がずば抜けていて、どんな子だろうと調査したら佐伯博士の娘だというから驚いた。 新薬研究の権威で奥さんも昔は、研究者だったというから美鈴という子もおそらくIQは高いのだろう。 「とにかくだ!20歳になったら東条 明だぞ。」 「アユとの生活が変わらないなら別にどうでもいい。」 「あーあまり変わんないよ。」 今は、リーレンの話はしない方がいいと俺は判断した。 意外に、一度臍を曲げると強情で受け入れない頑固な所があるから、警戒心も強いしそう育てたのは、自分なのだから誰にも文句は言えない。 「そうだ!明誕生日のプレゼントは、例のパソコンが当日届くからな。あとな本当は、節目だから一緒に祝いたかったが、仕事で海外に出るから間に合うように帰国は無理なんだ。」 今までやっていたゲームのコントローラーを放り出し、しがみついてくる。 「ほんまにあのスペックの買ってくれたん?有難う歩夢~ほんま嬉しいわ。」 「でもな、変な所をハッキングなんて俺がいない時にはするな!」 この間も海外の大手のIT企業に遊びのつもりでハッキングしては、入れてしまった事で「俺が実験した。」と言ったから明の名前は出なかったが危ない所だった。 「わかった~。」 と気の抜けた返事をしているが・・本当に解っているのか?
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