第五章

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「引っ越し?」 「うん・・色々あって家を手放す事にしたの。マンションの方が何かと便利だろうし。」 これは、美鈴の本音ではない事は明も解る。 「なんとかならないの?あの家は・・。」 「カイトさんの手伝いで叔父が嘘の借用書を用意したのは解ったんだけどその前に家の売却を決めてしまってて買い手がついたから。 それに税金や相続税なんかも考えると私では維持が難しいの。」 佐伯家は、いつも温かかった・・明がもう少し早く聞いていればと明は、後悔したが美鈴は維持をするのが難しいというのも理解で きた。 「マンションは、すぐに見つかったんだね。」 「うん。立地もよくて中古だけどほぼ新築なの。」 いい条件で破格の値段だったという美鈴の話を聞いて東条の祖父が手を回したのだろうと明にはすぐにわかった。 「手伝える事があったら手伝うよ。」 と明が言うと美鈴は、業者に全て任せたと答えた、美鈴達が住んでいた家の買い手は叔父が見つけた買い手だったみたいで強制的ではないが売却ありきの話だったようだ。 「ありがとう。」 この頃から美鈴の精神は、疲労してしたんだと思うが彼女はそれを隠して日々、妹の世話や雑事をこなしていたのだろう。 少し前に美鈴は、何を考えたのか高額アルバイトというのに興味を持ってしまって「一日体験」なる夜の街で働こうとした。 すぐに歩夢の知り合いやリーレンからの連絡で明も知る事になって「私が迎えに行きましょう。」とおろらく白か紅が美鈴を迎えに 行って店のママに事情を説明して「いい子が来たと思ったのに。」と渋るママを説得して明の元に美鈴を助け出した事があった。 少し男性を苦手としている美鈴が夜の街なんて無理で無謀に決まっていたから明は美鈴に説教した。 「美鈴は、夜の街は無理!仕事なら紹介するからもう~普通の仕事にしなさい!」 その時は、東条の祖父かリーレンにでも紹介してもらおうと思ったが 「ライトコーポレーションにアルバイトの空がありますから彼女を面接に来させてください。」という鷹崎からの連絡に従って美鈴を面接に向かわせた。 無事にライトコーポレーションでアルバイトが決まったと喜ぶ美鈴だがそこには、彼の力が働いていたのは明でも解った。 「鷹崎は、彼女を自分の手の平の上に置いておきたいのでしょう。」 そう言ったのはリーレンで自分でもそうすると言うから似たもの同士だと聞いていた明は思った。
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