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仕事中に紅からの連絡で急いで屋敷に戻ってきた。
「お嬢ちゃんが屋敷に数日滞在希望らしいよ~。」
「明が?」
「白が今屋敷にお嬢ちゃんを連れてきてる。」
急いで仕事を終わらせて帰ってきたら明が忘れていた記憶の欠片である「リー」という明しか呼ばない呼び名を彼女が口にした。
今までの苦労がすべてこの一瞬と為だったと思えたくらいに歓喜した。
明君は、まだ理解していないだろう・・どれだけ君を望んでいたかと言う事を。
成長した君が手に入るならどんな犠牲でも払うと決めた日から今日までながかったが報われた。
「明。貴女だけの呼び名です。」
思い出しましたか?というリーレンは見た事もないくらい穏やかな笑顔をたたえていた。
普段の彼は、作った顔でトップとして生きている。
彼の世界がどれほど過酷なのかは想像でしかないが陰謀と策略の中で生き抜いてトップに立つまでどれだけ苦しい思いをしていたの
だろうか。
「リー。庭で綺麗な剣を操っていたよね・・あと組手だったかな。」
幼かったからか断片的にしか記憶がない。
「明は、剣舞が好きでした。思い出しましたか?」
「うん。少しだけ・・。」
リーレンは、大股で明に近づくと明を抱きしめた。
「少しでもいい。思い出してくれただけでいい。」
「うん。」
明は抵抗しなかった出来なかった。
彼がどんなに自分を想っていてくれたかを感じ取ってしまったから。
婚約者として現れた時は記憶になく受け入れられなかったけど今は少し違う。
彼が自分を求めていてくれていた事実がいまここにあって昔の記憶から自分が彼を好きだったのは確かだ。
「私をすぐに愛して欲しいとは言いません。ただ受け入れて下さい。いずれ愛してくれたら・・いいえ明が愛してもいいと思えるように私は努力しましょう。貴女を愛してますよ。」
真摯な告白に答えたいと明も思った。
少し危ない男だけど嘘がない。
「私は、努力しますとしかいえんけど・・嫌いやない。」
「ええ、今はそれだけで十分です。」
リーレンは、明の額にキスをすると着替えてきますと足取りも軽く奥の部屋に入っていった。
それからギョッとしたのは白がボロボロと泣いていたからで。
「良かったです・・もう主の想いが通じて。」
横にいる紅は「白が泣く事ないだろう?」とハンカチを白に手渡す。
紅はガサツな感じがしたが意外と気のきく用意のいい奴だと明は覚えておく事にした。
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