第一章

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「私が訪日したのは少しこの懸念材料が危険だと思ったからです。複雑に入り組んでいますが陰謀があるような感じがしています。」 榊原だけの問題では無いかもしれないと言葉を濁す青年は証拠は無いが何かを掴んでいると清五郎は推測した。 清五郎は最悪な状況を想定する・・・誠一家族は独立した仕事をしていて東条の力は借りずに生活している。 本来なら東条グループのどこかの会社に収まってくれればいいと思っていたが誠一は自分で仲間と情報関係の仕事をしていると聞く。 「一つ聞くが・・誠一が何かを知ってるという事はあるか?」 清五郎は嫌な予感がして安易に聞くべきではない事を青年に聞いた。 「はい。おそらくは・・それなりに対応しているようですが。 手負いの獣は何をするか解りませんから。」 手負いと言うまでに榊原正和は追い込まれている事があるというのか。清五郎は難しい顔をしながら今後の事を考える。 誠一の事業については報告がきていてコンパクトに動いているが信用度は高くそこにいる従業員や契約している技術者は一流だと聞いていた。 役員の中からは自由にやらせるより東条のグループに迎えるべきという声も少なくない。 「そろそろ時期かもしれんな・・・。」 誠一を自由にさせてきたが榊原の件も考えるとグループに籍を置くように説得する必要があると清五郎は考えた。 あと数年は自分が現役で指揮をするつもりだが何があるか解らない。 後継者指名とまではいかなくても反発されても動くべきと清五郎はこの時点で決断していた。 東条にしても一枚岩ではなく前妻との息子二人には頭を痛めているのも事実だ。 早急に話を進めなければいけないと清五郎は決めた。 「旦那様!大変でございます。」 「なんだ?」 「誠一様ご家族が乗った車が事故だと報告がありました。」 自宅を出て家族でゆっくりとドライブがてらに山の麓のうどん屋によりこちらに向かう道での事故だと報告があった。 同時に「失礼します。」と白が顔面蒼白な顔で部屋に入ってきた。 「どうなっている?」 「はい。紅の報告では車が炎上とのことでヘリで確認しヘリは近くの学校で降ろし紅は現場に向かっております。」 状況は厳しいと言う事は白の顔を見ればわかる・・清五郎に許可をもらいヘリを回させると現地まで飛ぶ。 清五郎も同じヘリに乗り込むがそれには東条の執事は反対したが顔色を変えた清五郎に何も言えなくなった。 近くの学校に降りると既に紅の配下が車で待機していたが「今はお待ちになった方が」というから状況が悪いと言う事だ。 少し離れた小学校にまで嫌な臭いが漂っているから車が炎上したのが原因だと思われた。 近くに行くと消防車と救急車が数台到着していてあたりはガソリンが燃える匂いとあたりの木々が燃える匂いと煙で充満している。 事故数十分後に車が炎上と言う事から一縷の望を持ち状況の報告を待つ。 「お二人は車が炎上前に車から脱出はしていましたが煙を吸い込み危険な状況です。」
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