第一章

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崖から落ちたようで運び出すのも一苦労しているようだった。 運び出された二人は意識もなく顔色も青い。 「誠一!マリア!」 名前を何度も呼ぶ清五郎に余裕な印象は全くなくただ一人の父親として最愛の息子の名前を連呼していた。 「明は!明は・・・。」 小さな孫がいない事に気がつい清五郎は救助に向かう人に手当たり次第に聞く。 「紅は?明はどうなった!」 リーレンもまたいつもの様に冷静では無かった。 「明様は見つかっていません。車の中にいるか・・・。」 車は消火中でまだ中を確認できていないという。 「まさか!」 子供を置いて逃げるような二人ではない!もしかしたら乗っていなかった可能性もある。 「リーレン様!うどん屋では三人だけでなくあと一人の男性が一緒だったと報告がありました。車は二台です。」 イヤホンから聞こえる報告は明は何者かに助けられた可能性を示していた。 この報告の真偽を確認して状況次第で行動を変える必要があるとリーレンは思っていた。 「車の車種とナンバーと持ち主を調べてくれ!」 「承知しました。」 緊迫した空気の中燃えていた車の消火が終わったと連絡が来た。 心臓が経験した事がないほど高まる・・同時に背中に冷たいものを感じていた。 「車にはベビーシートはありましたが人はいません。」 ホッとするのと同時に明の行方は今だ解らないことには変わりなかった。 「出来る限り秘密裏に捜索しろ。」 配下にそう指示するとリーレンは清五郎の元へ走っていった。 清五郎は担架で運ばれる意識のない二人をドクターヘリを要請し東条総合病院へ搬送するように指示していた。 「息はある・・脈が弱いと。」 声が震えているのは最愛の息子とその嫁が瀕死なのだから仕方ない事しかし、つとめて冷静にしているのは流石だと思う。 「ベビーシートはありましたが明の姿はないそうです。」 リーレンは配下からの報告の一部を清五郎に伝える。 「それでは・・明はもしかしたら車には乗っていなかったのか?」 「その可能性が高いです。」 リーレンは清五郎に明の捜索は自分がするから病院へ行くように勧めた。清五郎はその申し出を受けて自身は病院へ急ぐ。 これは単なる事故ではないと清五郎もリーレンも思っていた懸念していた事が思ったより早く実行された可能性が高かった。 「主、車の持ち主は割れました・・それと麓のうどん屋から車に乗り込んだ時は三人で明さんはベビーシートでした。」 後方に二台目の車が走っていたと言う事で何があったのかはわからないがうどん屋から事故現場までは時間にして10分だ! その間に何があったか? ただ炎上した車には明は同乗していなかったのか何者かに助けられたのかそれは解らなかった。 カメラも少なく映像が残っていない為詳しくわからない。
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