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 私はその知識に感心していると、後藤君が「」と言って、目をキラキラとさせた。あまり見れないレアな後藤君の姿だ。きっと、彼の好奇心をくすぐっているのだろう。私は頷くと、鞄を持って図書室を後にする。  茜色の夕日に照らされながら、私たちは美術室にやって来ると、幸い鍵は開いていて、簡単に入ることが出来た。部屋の中には誰もいなくて、しんと静まり返っている。日光が入っていないせいか、少し肌寒く感じれた。  私たちは5の机に近づくと、特に何の変哲もない机をじっと眺める。 「これがどうかしたのかな……」  後藤君は、机の裏側が見えるほどの高さに屈むと、机の裏側を覗く。だが特に何もなかったようで、立ち上がると、傷だらけの表面を眺めた。長年、生徒たちがつけた傷だ。机を掘ったり、削ったりして、所々痛んでいる。 「何を意味してるんだろう……」 「この傷の中に隠されたメッセージがあったりして」  私は後藤君に言うと、後藤君が一度こちらを見て、それから傷を一つ一つじっと見つめた。私も後藤君が見ている所とは反対の場所にある傷を一つ一つ見ていく。それらの傷は、特に何の意味も無く、丸だったり、四角だったり、線や点などもいくつか見られる。 「サ、ク、ラ。桜だ」 「え?」 「これ、だよ」 「モールス符号って、あの?」 「ほら、これ見て」  後藤君は興奮した声で、一つの傷を指を差す。そこには先ほど、私が見た線と点が連なった傷があった。 「これがモールス符号?」 「そう。これは、サ。で、これがク。こっちはラ。この机にモールス符号はこの3つしかない。つまり、桜。桜の木に何かある」  本当に頭の回転が速い。謎解きイベントに行ったら、あっという間に解いてしまいそうなぐらいの勢いだ。いや、しまいそうではなく、しまうと断定した方がいいかもしれない。 「行こう」
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