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 後藤君は小走りで美術室を出ると、私も急いでその後を追う。玄関で外履きに履き替えてから、桜の木の前へとやって来ると、ちょうど青く茂っているその木の葉を見つめた。後藤君は、桜の木の周りを一周していて、木の幹をまじまじと見つめているようだ。 「……がある」 「掘られた跡?」  私は桜の木の裏に回って屈む後藤君の隣に立つと、地面を見つめた。確かに、そこだけ土の色が微妙に違った。よく目を凝らさないと分からないが、確かに土が掘り返された跡がある。 「掘ろう」 「えっ、でもいいのかな?」 「……バレなきゃ、きっと大丈夫」  後藤君らしかぬ台詞だと思った。普段の後藤君なら、ここまで来て「止めようか」と言うはずだ。それだけ、この謎が彼の心にクリティカルヒットしているのだろう。後藤君は、手で掘ろうとするが相当固かったらしく、立ち上がってどこかへと走っていく。  戻ってきた後藤君の右手には、スコップが握られていた。 「どこから持ってきたの……?」 「園芸部から借りてきた」  後藤君は、目をギラギラと光らせてスコップで土を掘っていくと、私も隣でそれを見守る。後藤君にも、こういう子どもらしい一面があるのだと思うと、何だか自然と笑みが零れた。マスクをしていて良かった、と思った。もしマスクをしていなかったら、この緩んだ顔を見られていたところだった。 「」 「え?」  そう言って後藤君は、スコップで何かを叩くような動作をする。すると、何か金属がぶつかった時のような、鈍い音がして私は目を見開くと、後藤君がさらに目を輝かせてスコップを隣に置く。それから今度は手で土を掘ると、銀色の何かが見えた。 「?」  綺麗に土を払いながら、その銀色の箱を後藤君が取り出すと、私を見る。 「」 「タイムカプセル?」
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