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私は後藤君の隣に屈むと、後藤君が生唾を呑み込んで、蓋を開けた。少しだけかび臭い匂いが漂ったが、幸いマスクをしていたお陰で臭いはそこまできつくない。私たちはタイムカプセルの中身を見ると、一枚の封筒に手を伸ばす。封筒には何も書かれておらず、私たちは互いの顔を見合わせながら、首を傾げた。
「封筒だ……」
「手紙、かな? 10年後の自分へ、とか」
「案外、ラブレターかもしれない」
「……それ、開けていいのかな? 見たい気持ちはあるけど……」
私たちはじっとその封筒を見つめると、烏が鳴いたのを合図に、掘り起こした土を元に戻し、空になったタイムカプセルと封筒を持って、学校内へと入っていく。新型コロナウイルスが流行しているせいか、いつもは騒がしいはずの校庭も、部活をしている生徒が少なくて、私たちの足音が五月蠅いほどよく聞こえる。
外履きから上履きに履き替えて、途中後藤君は手を洗って土を洗い流す。私はその間も、ドキドキしながらその封筒を見つめていた。
一体、この封筒には何が入っているのだろう。
教室へとやって来ると、私たちは向かい合わせになりながら封筒を見つめる。開けるか、否か。もし手紙だったら、プライベートな内容かもしれないから、開けない方がいい。でも、封筒の中身は何が入っているか開けない限り分からない。
「透かしてみる?」
後藤君が驚いた顔をして、それから笑い声を上げると、私はきょとんとした顔で見る。
「何か可笑しかった?」
「いや、海上さん、こういうのは止めておこうって言う人だと思ってたから」
「そういう後藤君だって、止めておこうって言う人だと思ってた」
「普段の僕ならね。でも、これはちょっと興味がある」
「後藤君って、意外と好奇心旺盛?」
「そうだね。色んな事を知りたいよ」
「前にも、私が何考えていたのか、何も面白くないのにって言ったのに、聞きたいって言ったもんね」
「そりゃぁ、好きな子が何考えてるかは、知りたいよ」
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