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 私は一瞬動きを止めて、それから後藤君から目線を反らす。後藤君はその反応を見て、くすくす笑うと、私は頬が赤くなっているのが分かった。マスクをしていなかったら、大問題に陥る所だった。 「でも、面白かったよ。喧嘩について。僕は考えたことが無かったから、勉強になった」 「……勉強というほどのものじゃないけど」  後藤君は目を細めて笑って、それから封筒を手にすると、スマホのライトを当てる。 「どう? 何か見えた?」  私は後藤君の傍に寄ると、光で透ける手紙を見た。 「手紙、ね」  後藤君がライトをオフにして、スマホを机の上に置くと、躊躇なく手紙を開ける。それから封筒の中身を取り出すと、そこには一枚の紙切れが入っていた。 「また?」 「海上さん、古本に挟まれていた紙切れ持ってる?」 「うん」  私はポケットから紙切れを取り出すと、後藤君に渡す。後藤君は、古本に挟まれていた紙切れと、封筒に入っていた紙切れを合わせるように繋げる。その紙切れは綺麗に重なり、。 「同一人物ので間違いない。筆跡も同じだし」 「……後藤君、刑事さんみたいだね」 「えっ、ああ、考え込むとこうなっちゃうんだ」 「謎解きとか好きでしょ?」 「うん、まぁ。たまにイベントにも行ったりするよ。最近はコロナのせいで、行けてないけど」 「楽しい?」 「楽しいよ。海上さんも、今度一緒に行く?」 「……行く」  後藤君がふふっと笑って、それからまた紙に視線を戻す。  紙には古本に挟まれていた「N窓5」と封筒から出てきた「135 9」という謎の数字の配列が書かれていた。この「135」と「9」が表す意味が分からない。 「何だろうね、これ」 「……と、」  後藤君は顔を上げると、また立ち上がって、図書室へと駆けていく。私はその後ろ姿を眺めながらくすくす笑うと、その後を追った。図書室が閉まるちょっと前の時間帯に、私たちは図書室にやって来ると、古本の前にやって来る。
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