1年生その2「夏生、暗闇を怖がる」

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1年生その2「夏生、暗闇を怖がる」

 わいの名前は 涼石(すずいし) 夏生(なつお)。  これは、あの頃を小学1年生の頃を思い出しての話。  ちょっと?結構?昔の話。 ::::::::::::  わいのうちは、リビングから廊下を抜けて反対側に和室がある。寝室として使っているその部屋に、わいの着替えもある。晩ご飯を食べ終わったわいは、お風呂に入るため着替えをとりに和室に行こうとしたんや。  でも、その日は何かいやーな予感がしたんや。  電気の消えた暗い和室の中に何か気配を感じる。  スーッと寒気がして手に汗を握った。  嫌やなー、嫌やなーって思ったわいは、 「……何かいる?」って呼びかけたんや。  ……  ……  返事はない!  シーーーンとした部屋の空気に恐怖が倍増する。   走ってリビングに戻って、ソファで漫画を見ている姉ちゃんに声をかけた。 「なあ、ねえちゃん。和室まで行って電気つけてくれへん」 「ハァ? いやや。めんどくさい」 「姉ちゃん4年生やろ。サービスしてーや」 「あほ」 「ええやん別に。減るもんやあらへんし」 「なに? 怖いん? あんたもう1年生になったんやろ。ええかげんにしいや」 「だって大変なんや」 「なにが」 「わからん。なんか和室に『何かいる?』って聞いてみたけど。シーーーーンってしてるねん」 「うん」 「だから、シーーン てしてるねん」 「うん」 「だ・か・ら」 「なに?」 「だから、その……静かすぎて……ちょっとだけ怖い」 「あほか、返事あった方が怖いやろ」 「なあ、ちょっと来てーやー。まだ何かいるかもしれんねん」 「おるわけないやろ、うちマンションの5階やで」 「なあ、何か出てきたらどないすんねん」 「何がでんの?幽霊、お化け?ハハハハ」  じっちゃんが、やってきた。 「どないしたんや、夏生」 「和室行くのが怖いんやて」  姉ちゃんが、馬鹿にしたように応えた。 「え、和室いくのが怖いんか?」 「だって」  ……今日はいつもと違うんや。 「夏生、こんな家の中で怖いことなんか何もあるかい。ほら、行ってこい」 「えー」 「何が怖いねん?」 「……」 「そんなんじゃ、立派な武士になれへんぞ」  剣道の達人のじっちゃんは、何かにつけて「武士になれんぞ」と言ってくる。  武士にならんれへんでええから電気つけて…… 「……」  わいは黙って俯いた。 「ほんまに、しゃあないなー」  溜息をつきながら、じっちゃんが廊下を歩いていく。  わいは、その後ろ姿に「気をつけてや」と小さく声をかけた。  じっちゃんが力強く腕を振り揚げて、そして力瘤を作った。  ……かっこいいー。  これが武士か。確かに武士もちょっとええな。  そして、じっちゃんの後ろ姿を見送った。  ……ほっとした。正直、結構ビビってたんや。 「やっぱり頼りになるのはじっちゃんやな」
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