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わいは、息を切らしながらじっちゃんに聞いてみた。
「じっちゃんは暗闇怖くないのん。怖いものないのん?」
「そんなもん、怖いことあるかい。じっちゃんは夏生ぐらいの頃にはもう剣道しとったからな。それに、わしの子供の頃は怒られると、すぐに真っ暗な蔵や物入れに閉じ込められたりしたからな、暗闇なんか慣れっこや。むしろ気持ち良く昼寝できてええぐらいやったで」
「お化けとか怖なかったん。なんか出てこんかったん」
「そんなもんいるかい。いても悪いことしてくるならやっつけてやるわい」
そこまで言うと、じっちゃんは目をつぶって黙り込んだ。
そして、今度はゆっくり話し始めた。
「ただ、まあ、出ると言えば」
「何?」
「そうやのう、ネズミは出たなー。あいつらは恐ろしい」
「ネズミ」
「そや、あいつらはあかん」
「ド○エモンやったかな、ほら緑の狸のあいつはネズミ怖がっとたけど。あの気持ちはよう分かる」
「緑やないし、狸やないで、それにド○エモン、ネズミ出た時、爆弾で地球壊そうとしとったで」
わいは、ちゃんと正しく教えてあげた。
「まあ、しょうがないわな、ネズミが出たんやから。しょうがない」
「しょうがないんかい」
「あれは忘れられへんのう。怒られて入れられた蔵で気持ちよく寝てたんや。油断しとった。そしたらいきなり耳をガブっや。痛いし、血がだらだら出てくるし。もうパニックやで。そんで気がついたら、ガサガサガサガサって物音がして、薄暗闇の中、ギロっと目がいくつか光ったんや。長い尻尾が気持ち悪くてな」
じっちゃんが震える。
「ヒィーーーーーーーーー。想像してもた。あ、あれは、あかんわ」
息を整えるじっちゃん。
「でも、ほら今はネズミ出えへんし大丈夫や」
わいの頭を撫でながら、じっちゃんがホッとした顔を向ける。
「そんなんずるいは。わい、ネズミは大丈夫やで」
と言って、わいは閃いた。
「そや、ほな一緒に特訓しよ。じっちゃんはネズミを、わいは宇宙人を、それぞれ怖がらんように特訓や」
「なぬ。特訓?しかも、わいもか?」
「そらそうや。武士やもん」
「ふーーーーん」
と考え込むじっちゃんに、わいは竹刀を渡した。
「刀をもったら武士は怖いもんなしや。じっちゃん」
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