1年生その2「夏生、暗闇を怖がる」

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「で、どないするつもりや」  じっちゃんが、聞いてきた。 「どこ行けば、ネズミや宇宙人いるかな。ねえちゃんどない思う?」 「しらんわ。ネズミはともかく、宇宙人出るんやったら私も見てみたい」  ねーちゃんが、漫画を読みながらめんどくさそうに答えた。  わいはもう一度、いろいろ考えてみた。  この辺の暗いところで、ネズミや宇宙人の出るところ…… 「そや、あの白岳神社の裏、あの林の道、あそこやったらどうやろ。ほら何か出るって噂になってた」 「髪の長い白いワンピースの女性が、じーっと立ってたって噂でしょ。口裂け女がどうしたこうしたとか」 「なんやそれ、女の人やったら全然怖ないやん。なあ、じっちゃん」 「……いや、それはそれで、ほんまにおったらちょっと不気味やけど。ま、でも地球を破壊するまでではないな」  じっちゃんが、うんうんと頷く。 「まあ、どっちにしろネズミは出ないんやない。こんな住宅街で。ましてや宇宙人って……」  ねえちゃんが、呆れた顔でつぶやく。 「えーー、そうなん。つまんなー」 「あんた、怖いんちゃうの?」 「……そうやけど、怖いけど見たい。見たいけど怖い。……それに、ばあちゃんのバリア一度使ってみたい」 「ばあちゃんのバリア?」 「宇宙人がきたら、きっとバリアで守ってくれるんや」  わいは両腕を広げて、バリアを張った(ような仕草をした)。  ねえちゃんが、フッと鼻で笑う。 「やってみ、ねえちゃん。両手を広げて、フンッや」 「あほ」  と言ってまた漫画を読み始めるねえちゃん。 「どないしょっかなー」悩むわい。 「うん。でもまあでも特訓やからええか。本物が出てきた時の特訓やから、今日は出てこなくても良しとしよう。じっちゃん行こう」  時計を見るじっちゃん。 「まあ、まだ7時半やし。ほな腹ごなし程度に行ってみよか」 「ねーちゃんも一緒にいこう」 「行くわけないでしょ」  ねえちゃんが即答した。 「あーー、怖いんや」 「怖いわけないでしょ。あんたと一緒にせんといて」 「その、白いワンピースの女性が怖いんや」 「あのね、噂話よ。噂話」 「怖いんや、怖いんや♪。やっぱり、ねーちゃん怖いんやーー♪」 「怖くないわよ」 「ほな、一緒にいこうや」 「いやや!」 「……怖いんやな」  そう言ってじっちゃんの顔を見た。 「……怖いんや」  じっちゃんも頷いてくれた。 「あ、もう。一緒にいけばいいんでしょ。いけば。まったく」  そういうと、ねーちゃんは勢いよく起き上がった。
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